『翌檜』と書いて『あすなろ』と読む。ヒノキ科の針葉高木、アスナロのことである。ヒノキと同様に建材となるが、異臭がするなどで一段劣るとみられている。それでも「明日はヒノキになろう」と頑張っているという“伝説”から、この名前がついた。
一生ヒノキになれないと思いながらも、夢は捨てずに努力するというのは、かつての日本人の琴線に触れるような“伝説”であったのだろう。漢字も『明日は檜』というので、『翌檜』となったようだ。
若者たちに「夢を持て!」と言う、また「現実を見ろ!夢だけでは生きていけない」とも言う。歳を重ねると勝手なことを言える機会も多くなってきた。聞く側にとってみれば、きっと小さな親切大きなお世話なんだろう。
少なくとも10代の若者は、『あすなろ』の気概でいてほしいような気がする。あまり早くから老獪すぎるのも、人生おもしろくないのでは。
「強い心」「たくましい心」と叫んでみても、なじめない時代になってしまったのなら、せめて枝折れしない「しなやかな心」ぐらいは身につけたい。