一般的な筋肉はひとつの関節をまたいで起始部と停止部がある。二関節筋は名の通りふたつの関節をまたいでいる筋肉。魚類にはなく、陸上の四つ脚動物に存在。ということは、原始の魚類が陸上に生活を求めだした頃に、この二関節筋が生物の進化と同時に誕生してきたとのこと。なんと今から3億5000年前だとか。今のような二関節筋に進化してくるのには、これまた数千年から1億年の時間が必要だったと推測されるらしい。
原始生物が水中から地上に上がり、重力に対して筋肉が発達し、多様な動きに対応できるように二関節筋が進化してきたと仮説すると、赤ちゃんも誕生して約1年間の間に生物の進化の過程が凝縮されると言われている。赤ちゃんがイスや低いテーブルにつかまり立ちし、その場で足を屈伸している様は、何とも愛くるしい限り。間もなくイスから手を放して脚を一歩、そしてまた一歩、そしておしりからドスンと落ちる。まさにこの歩き始めるための、つかまり立ちをしながらの股関節と膝関節を屈伸させる動きこそ、多数ある二関節筋に刺激を与えていると思われる。約1億年必要だった進化が、数日の間に行われる赤ちゃんのその場屈伸。1億年分がギューッと凝縮されたと思える進化の不思議。