イチローがまた前人未到の記録を作った。もはや安っぽい賛辞の言葉などでは語れないほど、次々と記録を塗り替えていく。そんなイチローを同じ日本人のチームメイトとして、城島選手が朝日新聞のインタビューで語っている。「イチさんは決して天才ではない。本当の天才は自分のパフォーマンスを説明できないでしょ。でもイチさんは自分のプレーをこと細かく語れる。努力している過程を含め、一から十まで理詰めで話せる」と。
9年連続200本安打の記録達成後の記者の質問に対して、バッティング技術の一部として応えた言葉が、「手を出すのは最後」のひとこと。本当に彼ほど独特の言い回しで言葉を持っているトップアスリートも少ないのでは。すでにたくさんのイチロー語録が本になってくることを見れば、想像がつく。
「手を出すのは最後」も、スウィング系の身体の動かし方について、端的に答えた言葉だと連想させるが、いかがだろう。バレーボールのスパイクやレシーブにも通じる、身体技能を言葉で表現したものと考えられるのでは。低いトスに対して「もっと高く上げろ!」の一点張りでなく、どのように上げればよいのか説明しない、出来ない、言葉を持たない場面に遭遇することも少なくない。
それにしても、イチローをチームメイトとして間近に見ているキャッチャーの城島も、その観察力・洞察力には恐れ入った。やはり日本人でただひとりの大リーガーキャッチャーだけのことはある。