栄養学やビタミンの話ではありません。
昨夜のNHKの人気番組『プロフェッショナル~仕事の流儀~』をご覧になられた方も多いのではないでしょうか。
見られていない方のために・・・木村秋則氏(57歳)は30代の頃無農薬によるりんご栽培に挑戦し、当時その世界では絶対に不可能と言われていたそうです。木村さんは試行錯誤を繰り返し研究しますが、8年間はりんご農業による収入はゼロだったそうです。一家の生活費は深夜のアルバイトでしのぎますが、取り組みだして6年目頃には自殺をしようと山林の中に入っていたそうです。その山の中でりんごの木に似た「くぬぎの木」に目が止まり、その付近の土を夢中になって掘り起こした結果、ヒントを得て再挑戦したとのことでした。
この辺りが万人では考え付かないパワーの持ち主です。
りんごの木を植える土の環境をできる限り自然に近い状態を保ち、下草刈りもあまりせず雑草を生やし、年に数回タイミングを見て草刈りをするそうです。
そして一番の問題は、不可能と言われていた害虫対策です。それを独自の調合による酢を使い、なおかつこの酢を散水するには決してスプレヤー(散水車)を使わず、1本1本りんごの木に持ち運びの散水器で歩いて回るそうです。車の進入によることで、土を硬くしないことが大切とのことです。
まず番組を見て驚いたのは、8年間も収入のなかったこと・・・現代人、特に若者の仕事や労働に対してすぐ対価を求める風潮、仕事やアルバイト選びも、何をしたいかではなく時給いくらか、といったことが決め手になることと比べ、木村さんの執念ともいえる覚悟は、土地の人々から「かまど消し」(たぶんちょっと変わった人という意味だと思います)と言われ、誹謗中傷が続いたそうです。多くの人々と違うことをする困難、風当たりの強さが言葉から伝わってきました。
番組の中での木村さんのお言葉に、
「りんごは育てない」
「手助けするだけ」
「効率よりも大切なものがある」
知識だけでなく、失敗を繰り返す中から得た言葉の重みに、胸が締め付けられる思いがしました。
社会やバレーボールに置き換えても、人材や選手の育成に関わる者として、先の言葉の中に共通する価値があるように思いました。
このブログの名称は『一粒百行』です。たったひとつのお米作りにも100回以上の手を加えなければなりません。たった1個のりんごも、ましてや人の成長は、促成栽培や農薬による大量生産と見かけの美しさではなく、木村さんのおっしゃる「効率よりも大切なものがある」の言葉の中に私自身が目指している大きな目標が詰まっているような気がしました。
つい目先の結果を欲しがる人々が多い中、じ~っと“待つ”ことを考えさせられる番組でした。